元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
使用人たちから、レインがユリウスに抱きかかえられている、というのを伝えられたのだろう。男爵夫人はキツネのような目を吊り上げ、レインをにらみつけていた。震えるレインの頭をユリウスの手が撫でると、それも気に食わない、といった様子で、男爵夫人はますます肩をいからせた。
「奴隷……?」
アンダーサン公爵、と呼ばれた青年が、ユリウスに抱かれているレインを見やる。縮こまったレインにユリウスは笑いかけると、アンダーサン公爵にレインの顔を見せるように近づいた。
「この子を、奴隷として虐待していたのです。父上」
アンダーサン公爵は、不思議そうな顔をしていたけれど、奴隷、という言葉を聞いてはっと顔を厳しいものに変えた。
「そうか……つらかったね……。え、君……は……!?」