元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 たくさんの街灯が導くように道を照らしている。

「あれが今日泊まるホテルだよ」

 遠目で見た「ほてる」は、ひょっとしたら領主の館より大きいかもしれない。
 馬車を飛ばして二つ向こうの大きい街に来たのだ、と教えられて、レインは今自分が館の外にいるのだ、と自覚した。
 ユリウスに抱かれて入ったホテルの天井は首が痛くなるほどに高かった。
 まばゆく高価なガラスがふんだんに使われたシャンデリアが、ホテルのエントランスを明るく照らす。ホテルの前に公爵家の馬車がついた時点で集まってきていたのか、ホテルの執事やメイドが入り口に勢ぞろいして、レインたちを出迎える。

「いらっしゃいませ、アンダーサン公爵閣下、ご子息様、それから……」

 ホテルのオーナーだろうか。ひとり立派なスーツを着こなした初老の男性は、はユリウスの腕に抱かれている小さなレインを見て、おや、と片眉をあげた。
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