元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
「レインだ。僕たちの大切な姫君だから、相応の対応を頼む」
「なるほど、承知いたしました。誰か、温かいお湯と、たくさんの清潔なタオルを。お嬢様にぴったりのワンピースも用意しなさい」
「はい、オーナー」
ユリウスの言葉で、ホテルの従業員たちがレインに向けるまなざしが一斉に変わった。そこに好奇の色なんてみじんもない。彼らの目には、その瞬間、レインは哀れなみずぼらしい少女ではなく、敬うべき上等な宿泊客のひとりとなったらしかった。
従業員たちがきびきびとした動きでレインのためのものを準備し始める。レインはそれを不思議な気持ちになって見つめた。
「ひめ、ぎみ」
「姫君だよ。レイン。君は僕らのお姫様なのだから」
「で、でも、ユリウスさま」
レインは戸惑ってユリウスを見上げた。そうして、隣にいるアンダーサン公爵と交互に見る。