元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
アンダーサン公爵がなにか話すことがあると言って、侍従とともに部屋の外に出て行ったから、この部屋には今、ユリウスとレインのふたりっきりだった。
あたたかい、やわらかいベッドは、あの干し草の寝床とはまるで違う。
向けられる気持ち、言葉の種類だって。
それを改めて自覚したとき、レインはその眦から涙を一筋、こぼした。
「レイン」
「これは、夢なんですよね」
「……レイン?」
「これは、きっと素晴らしい夢。やさしいひとが、私を助けて、頭を撫でてくれる、夢。覚めてほしくないけど、きっと覚めてしまう……」
ぽろぽろとあふれる涙を止めることができない。レインはずっと胸の奥にわだかまっていた不安が急に形を成したのに気づいた。
――そっと、手を握られる。