元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
「夢じゃ、ないよ、レイン」
「ユリウスさま……?」
「僕の手が強く握っているのを感じる?あたたかいかな、それとも冷たい?」
「少し、ひんやりしてます」
「熱、ちょっと下がったかな。……温度を感じて、この手を感じて、そうして今、レインはここに横になってる。……大丈夫、夢じゃないよ」
ユリウスの言葉に、レインは赤い目を潤ませた。
あたたかい……それは、レインがもうずいぶん感じていなかった温度で、と同時に、ずっとずっと欲しかった温度だった。
「ユリウスさま、わがままを、言ってもいいですか」
「もちろん」
「手を……」
「手を?」
「握っていてくださいますか。私が眠るまで」
「うん――うん。いいよ……」
ユリウスの手が、レインの手と絡められる。指の一本一本をきゅっと絡められて、レインはほっと息をついた。
うとうととまどろむレインに、ユリウスが子守唄を歌うように告げる。