元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
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「旦那様」
家令が主人であるアンダーサン公爵の執務室へやってきた。
父のもとで勉強しているユリウスに気付いて、深く礼をする家令は、アンダーサン公爵が促すと、沈痛な表情で話し始めた。
「お嬢様の健康状態ですが、肺炎はほぼ完治しつつあります。打撲による骨折はもう少し……」
「そうか、快方には向かっているのだな」
「はい。……旦那様、いったいあのお嬢様は何をされていたのですか。よほど強い怨恨がなければあのようにはされますまい、人のする所業とは思えません、まだお小さいお嬢様をあれほど痛めつける理由とは……」
家令は、レインの遠慮がちに浮かべる笑顔を思い出したのか、ぐっと辛そうに眉をひそめた。
「八年前、女王陛下が亡くなっただろう」