元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

 オリバーの襟首をつかみ、首を絞めるように引き上げたユリウスに、ヘンリエッタがおびえたような声を出した。ぎゅうぎゅうと首を絞められ、泡を吹いたオリバーを助けようとする者はいない。皆、ユリウスの剣幕に怯えているのだ。

「貴様も黙れ、ヘンリエッタ・コックス。貴様が私の大切なレインを貶めようと様々に画策したことはすべて調べがついている。今までレインが何も言わなかったから見逃していたが、それが間違いだった」

 ――レインに近づく害悪は、すべて私が排除せねばならなかった。

 呟かれたそれを、正面から受けたヘンリエッタはさあっと顔色を青く変える。

「で、でも、ユリウス様、私、本当にいじめられて……」
「まだ言うか。その頭にはカボチャスープでも詰まっているのではあるまいな。本当に愚かだ。だいたい、王家とレインの婚約など、私自らが破棄して久しい」
「ど、どういうことですか……?」

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