元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
今度はレインが声をあげる番だった。だって、レインはいままで、この婚約がアンダーサン公爵家のためになると思って耐えて来たのだ。それを、兄自らが破棄していた、だなんて。
「私は、お兄様のお役には立てなかったのですか……?」
「ああ、違うよ、かわいいレイン」
今にも赤い目から涙をこぼしそうなレインの目じりをそっとぬぐい、ユリウスはオリバーたちに向けるのとは真逆の表情でレインに向き直った。
「泣かないでおくれ、私のレイン。私があの婚約を破棄したのは、お前を誰にも渡したくないと思ったからだ。お前は今、私の婚約者なんだよ、レイン」
「……え?」
レインは目を見開いた。だって自分はユリウスとは戸籍上は兄妹のはずで、兄妹は結婚なんてできなくて……。そもそも、王家と公爵家のつながりを増すために婚約をしたのであって、レインとユリウスが結婚してしまえば、その目的もかなわなくなって……。