元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
そこに、レインの持つ甘い夢のような、分不相応な感情を見透かされているような気がして、レインはとっさに、ごまかすように口を開いた。
「とても良い方だと思いましたわ」
にっこりとほほ笑みながら口ずさんだ言葉は真っ赤な嘘だった。
「好感を抱いた、と?」
「はい」
「……そうか」
ユリウスは、その秀麗なおもてに渋面を浮かべた。
レインは、あ、間違った、と思った。
人の顔色を窺うことは得意だったはずなのに、幸せな生活をしていて油断してしまった。ここは本音を言うべき場面だったのだ。あの人は嫌いだと、オリバーにはもう会いたくない、と。
あわててレインが訂正しようとした、その時だった。