元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される

「あの……」
「実は、王家からレインの婚約を打診されていてね」
「え……」

 こんやく、とレインは唇だけでつぶやいた。
 喉が急にからからに乾いて、指先がおこりのように震える。

「私は、養女です。しかも、もともと奴隷身分でした」
「この国は奴隷を禁止している。だからレインは平民だった、ということになっている」
「でも……」
「それでも、だ」

 ユリウスは苦々しい顔で話を続けた。

「養女でも平民でもいい、と。レイン、お前と第一王子の結婚を強く望まれた。おそらくは、先代女王陛下の崩御から求心力の落ちている王家とアンダーサン公爵家の結びつきを強めたい、という思惑がある」
「お、兄様、それは、以前から……?」
「……レインが養女になったあたりから、ずっと打診されていた」
「そんな……」
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