元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
これはユリウスがまだ七歳のころの話だ。
ユリウスが、守るべき姫君に出会ったときの話。
先代の女王がユリウスの一家を城へ呼んだ。王族にのみ入ることが許された私的な庭園。そこには今の国王もいたと思う。少し小雨が降っていたが、先代女王の提案で、傘をさして外に出た。
まだ皺の一つもない美しい女王は、王配との間に生まれたばかりの一人娘を見せる、という名目で、彼女の弟たちを呼んだのだ。
この国は長子相続制だ。女王は二人の弟を持つ姉だった。と同時に、そのカリスマ性と、優れた政治の腕によって、民から慕われた、まさしく王と呼べる存在だった。
そんな彼女が、初めての子供である姫君――イリスレインを抱いたときだけ母の顔になったのを、よく覚えている。
「ほら、ユーリ、ごらん。この子の目にも、私と同じ、王の証である暁の虹が宿っているのよ」
「わあ……」