元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
「ごく普通の指摘をしただけです。それにマナーのニア先生にも、コックスさんのマナーのことを頼まれています。このままでは単位が危うい、と」
「またそうやってレイン様は! 私がオリバー様と仲良くしているから嫉妬してらっしゃるのね!?」
「していません」
レインはぴしゃりと言った。
まったく話が通じなくて、どうすればいいのかわからない。レインは額を押さえた。拾ってくださったユリウスに恥をかかせないよう、必死でマナーを学んだレインには、その不真面目さが理解できなかった。
「コックスさん、補講のお手伝いはしますから、一緒に――」
「レイン! それ以上嫉妬に狂ってヘンリエッタを侮辱するなら、俺にも考えがある」
「はあ」
レインは思わず呆けた声を出した。
この方は、何を言っているのかしら、と思ったのだ。
「なんだ、その反応は!」
「いえ」
「まったく……今なら許してやるから、早くヘンリエッタに謝るんだ」