元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
オリバーが呆れたように言う。レインはいいえ、と首を横に振った。
ありもしない非を認めることなどできない。レインは正しいことをした。だから間違っていると謝れば、アンダーサン公爵家まで――ユリウスまで貶めることになってしまう。
レインは顔をあげ、きっぱりと言った。
「私は間違ったことをしておりません。したがって、謝る必要もございません」
「なんだと……!」
「ひどい!レイン様……!」
「ほかに言うことがないならこれで失礼します」
言って、レインは踵を返した。顔をあげたまま、顔を隠しても、それだけはきちんとしなければ。
そうしないと、泣いてしまう。それだけは――ユリウスの、アンダーサン公爵家の令嬢が、無様に泣くわけにはいかなかった。
けれど、そういうことはそれからも何度も続いた。
ヘンリエッタの持ち物が盗まれたときは、レインのせいになった。レインが取り巻きにやらせたのだと、噂になっていた。
おかしいわ、とレインは薄く、泣くように笑った。だって、孤立したレインには友人なんていないのに。