元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される
――汚い、赤い目。血みたいね。怖い。
ヘンリエッタの言葉だ。それでレインはますます委縮した。立っていることがやっとだった。
オリバーもレインをかばうことはなかった。
そればかりでなく、レインが睨んでヘンリエッタを泣かせたのだとまで言ってレインを詰った。
オリバーには、もう、最初に出会ったときのような熱はないらしかった。……それは、それでありがたかったけれど。
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「……大丈夫か、レイン」
「はい、お兄様」
「……明日は、学校を休みなさい。私が久しぶりに休めるんだ。だから、一緒に気晴らしに行こう」
「それではずる休みになってしまいますわ、お兄様」
家に帰ったレインを迎えたユリウスの第一声は、レインを案じるものだった。大丈夫だと言ったレインに、ユリウスは続きを口にする。
くすくすと笑ったレインを見て、ユリウスはふっとその顔に笑みを浮かべた。ああ、やっぱり、自分はユリウスのこういう優しい顔が好きだ、と思った。