誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー

Real＆Story３

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「今日もやってくれるのー？」

「はい。先生、今日も残業って言ってたから。任せてください！」

「本当に、優しくて気が利いて天使みたいだね…」


大袈裟に喜ぶ若くて可愛らしい事務の先生から、大きなジョウロを受け取る。

放課後になってすぐ、私は中庭へと足を運んでいた。


事務の先生は書類や手続きのいろんな仕事を持ちながらも、

中庭の花壇や生徒がいない教室以外の植物の世話もしなければいけないらしい。


入学してから少し経った頃、

特に意味もなく中庭を訪れた私は、大変そうな事務の先生に遭遇し、

それ以来、予定のない時はその仕事を少し手伝うようにしていた。


「本当はね、来てくれると思ってたから、中庭以外やっちゃった。期待しちゃっててごめんね～」


可愛らしく両手を合わせる先生に、私は柔らかく頬を緩める。


「全然です。それに、中庭以外も残してても良かったのに。私どうせ部活にも入ってないですし」

「ううん。中庭だけ、お願いね。広いからそれだけでもありがたいの」


先生の方が大変なのに…。

先生は、そんな素振りを見せず、これでもかというほど私に感謝して、職員室へと戻っていった。


「無理しないでくださいね？お疲れ様です。」


手を振ると可愛らしく振り返してくれる先生に、私も笑顔になり、その後ろ姿を見送った。


丁寧にお世話をする先生の愛情を受け取って、綺麗に生え並ぶお花たち。

優しく水を与えながら、私はゆっくりした時間を過ごす。


あー、癒されるなあ。

先生の手伝いだなんて言いながら、私はこの時間そのものが好きだった。


誰に気を遣うわけでもない、ただ、温かい日を浴びて、可愛らしいお花に囲まれて時間を過ごす。

その時間が私にとっては癒しの時間だったのだ。