誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
「……っ、ふ、あはは」


聞こえたのは、軽快な笑い声でした。

思っていたものとは違う声に、少女は目を開き思わず顔を上げてしまいそうになります。

ぐっと堪え地面を見つめながら、あの美しい顔がこんなにも思い切りよく笑ったらどんな顔になるのだろう。

そんな好奇心が浮かんでいました。


「顔を見せよ」


しばらく笑っていた王子様は、私の目の前にしゃがみそう言いました。


「お、お見せできるようなものでは…」

「いいから、見せよと言っている。」


王子様の片手が顎のあたりに伸び、強引にくいっと顔を上げさせられ、目が合いました。


綺麗に整った王子様の顔が、笑顔に崩れ、少し幼く身近に感じられるその表情。

そして、交わった宝石のような透明な瞳に目を奪われ、少女は夢見心地のままぼんやりと呟きました。


「綺麗…」


王子様は、一瞬驚いたような表情を見せてから、満足げに片方の口角だけを上げ、立ち上がります。


「それは私が受け取ろう。大事な町を汚して悪かった。残りは我々が片付ける」

「え…いや、そのような…っ」


話は聞かず、大きなゴミ袋を軽々と奪った王子様は颯爽と背を向け、その場を後にしました。


夢のような信じられない時間に、少女はしばらくの間その場に座り込んで呆然としていました。


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