誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
スマホを手に取り、ドラマについて調べてみると、反響は凄まじいものだった。


そのほとんどが、人気俳優の起用を喜ぶファンたちのものだったけど、

その中にちらほら見られた小説に対する反応に、私は眉をしかめる。


「この原作、悲しすぎるんだよね。だから泣けるんだけど」

「可哀想っていうか、嫌な終わり」


そんなニュアンスの言葉ばかりが並んでおり、

私は、ため息をついてスマホを閉じた。


大衆の意見に対して不満に思うのは、

幼い頃から何度読んだか分からないこの小説を、悲しいお話だと思ったことは一度もないからだ。


これは、私にとっては悲しいお話なんかじゃない。



+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.+.。.:*

平凡な女の子に夢を見させてくれた心優しい王子様の

素敵な夢の物語なんだから。

+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.+.。.:*


「久しぶりに読もうかな」


私は少し傷の入った手馴染の良いハードカバーに手を掛け、そっとその分厚い扉を開く。


そして、物語の世界へと溶け込んでいった。
< 2 / 95 >

この作品をシェア

pagetop