誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
「払うよ」

「え?いいよ、俺バイトしてるし。妃花だし」


優しい笑顔で、財布をしまうように促され、

私は、困りながらも財布をカバンに入れてたい焼きを受け取った。


「……あ、ありがとう…」


言葉に詰まりながらも、静かにお礼を言いながら近くのベンチに腰掛ける。


沈黙の中、たい焼きを頭から食べると、

かりっとした香ばしい触感の後、すぐに甘ーいカスタードの味が広がった。


「甘―、美味しい…」


思わず頬がゆるんでしまうような美味しさに呟いてしまい、

顔を上げると、皇輝が優しい瞳で私を見つめていた。


「……っな、なに、食べなよ!」

「いや、可愛いなって思って。…あ、本当だ、うま」


何でもなさそうな顔で甘い言葉をささやく彼に、

私の頭にはぼんやりと、

この人は本当に前世王子様だったのかもしれないと、

バカげたことがよぎってしまった。
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