誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
「嫌だよ」


だけど、返って来た言葉は、想定していたものとは180度違っていた。


「嫌って、だって。」


私は、裏切られた気持ちのまま、また、食い下がろうと口を開く。

だけど、それを黙らせるように皇輝は鋭い目で私を見つめた。

その、優しいだけじゃない、獣のような瞳に私は言葉を飲み込んでしまう。


そして、皇輝はゆっくり息を吐いてから、落ち着いた様子で口を開いた。


「やっと見つけたんだ。

俺は、必ず妃花を手に入れる。

例え、妃花自身が否定したとしても」


現実離れした強すぎる言葉なのに、冗談を言っているとは思えない真っ直ぐな瞳。

私は、冗談だと笑い飛ばすことも出来ず、驚きで言葉を詰まらせて、皇輝を見つめ返す。


「わ、分かんないよ…。

なんなの?それ。運命とか、やっととか…。

私達、転校してからほんの少ししか会ってないし、ちゃんと話したことだって少ないのに

……まさか本気で言ってるの…?」


少しずつ感じていた違和感を口にする。

面白がって遊ばれていると自分を納得させていた。


だけど、普段とは違う優しい笑顔とか、見透かすような真剣な瞳とか。

勘違いを起こしてしまいそうだと思うことは、何度かあって…。


「本気だよ、めちゃくちゃ本気」


真っ直ぐな答えが返ってきて、私は頭を抱えそうになる。


「本気だとしたら、どうして。
私なんかのどこが…。」


私の中にある卑屈な心が顔を出し、私を俯かせる。

皇輝は、隣から立ち上がり、私の前に跪くように膝を立て、そっと優しく私の顔を上げさせた。


「俺は、ずっとお前を探してた。前も言ったはず。

最初はもしかして、と思っただけだったけど、毎日それは確信に変わっていくんだ。」


目の前で膝をつくその姿は物語の王子様そのもので、

整いすぎたルックスのせいか、目を奪われてしまうほど、美しいものだった。


実際に見たことなんてあるはずないのに、

本当の王子様はきっとこんな風に表れて、姫を救い出してしまうんだろう。


そんなことを考えてしまうくらいには、様になっていた。
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