誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
私だけが知っていた、彼が本物の王子様のような美しい所作をすることを。

…なのに。


「きゃああーーー!!」


クラス中からは、黄色い歓声が溢れた。

皇輝は、その歓声に満足げに立ち上がり、男友達の輪に帰る。


「やるじゃん、さっすが前世王子」

「俺もときめいちゃった」

「はっ、うるせえ」


笑い合う男たちと騒ぐ周りの女の子たち。

それとは対照的に萌は声も上げず、ただ顔を赤らめていた。


その姿に私は、がたっと席を立つ。


黄色い歓声を上げる女の子たちよりも、気になったのは萌の様子。


運命だなんて、言っておいて、誰にでも簡単に言うんじゃん。

…他の子のこともドキドキさせちゃうじゃん。


「…妃花…?」


隣にいた友人の驚いた声に、私ははっとした。

大きな音を立ててしまったのか、ちらほらと視線を感じ、私は気持ちを焦らせる。


……な、なに、この気持ち、なんで私…。


「妃花?」


後ろから聞こえた皇輝の声に、私は顔が赤く染まった。

そして、その顔が見られたくなくて、

その場から逃げ出すように教室から飛び出した。
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