誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
「ご来賓の方々が農場を視察したいと仰るので、お願いしたい」

「はい、承知いたしました」


農場を管理する使用人の団体の中の長を務めるおじいさんの

礼儀正しい返事が聞こえ、談笑していた使用人達は様子を伺います。


「ご視察にいらっしゃるようですので、いつも通り、

作業を続けてください。無礼のないようにお願いしますね」


「はい」


穏やかに、それだけを伝えたおじいさんに、使用人達も柔らかく返事を返しました。


「いつも通りとはいっても、お喋りは控えめにね」


いたずらっぽく笑う、若い使用人のお姉さんに、少女もにこりと頷きました。
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