誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
一連の出来事を見てしまった少女は、

目をそらすように、目の前にできた草の山を抱えました。


捨てに行くために、農場を出て、とぼとぼと歩きます。



あのたくさんのお嬢様方は、皆、王子様に気に入られたくて、ここを訪れているんだ。


そうだよね、王子様は魅力的な人。

それに、皆に対して、優しい素敵な人。


あんなに魅力的な女性がたくさんいて、

私が選ばれるはずなんてない。


すっごく優しく微笑んでたし…。


ズキリと痛む胸に、少女はため息をこぼしました。


草の山ができる、焼却炉へたどり着き、抱えていた草を投げ込みます。


「…っ、」


突然、悲しみが襲い掛かり、少女は涙を零しました。

…どうして、私には泣く権利なんてないのに。

私が選ばれないなんて、知っていたことなのに…。
< 56 / 95 >

この作品をシェア

pagetop