誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー

Real&Story10

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私は静かに、本を閉じた。


少女はきっと人生に絶望して死んでしまったんだ。不幸だった。可哀想だ。

そんなレビューに溢れていた、SNSを思い出す。


私はずっと、少女は幸せだったと思っていた。


だって、ただの村娘で毎日変わらない静かな生活を行っていた少女が、

たった一瞬だけでも、夢のような世界を見せてもらったんだから。


憧れの王子様に愛され大切にされて、一度は本当に結婚をしたいと思ってくれていた。


その気持ちは本物だったと思っている。


そしてきっと、最後につぶやかれた王子様の言葉は、少女にとって素敵な言葉だったに違いない。


現実が厳しいことなんて仕方ない。

少女だってきっと納得していたはず。


だから、最後少女を選べなかった王子を恨んでなどいないし、命を落とすこともきっとない。


王子様と離れて、また変わらない静かな生活に戻っただけ。

王子様が見せてくれた刹那の幸せを噛み締めて、その後の人生を生き抜いたはずだ。

変わらない毎日の中で、一度だけ見せてもらった夢を思い出し、最後だって幸せだったんだ。


私はなぜかそう確信していた。

だから、この小説が大好きだった。
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