誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー

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「ほら速くー！皇輝待ってるから！」


ヘアメイクをしてくれた女の子がそう叫び、キャストと時間を持て余したクラスメイトが移動していく。

ずっと呆然としている私を呼ぶように萌の声が響き私は肩を貸してその姿を追った。


「自信持てた？」


にっこりと微笑まれて、私は小さく頷く。


「凄い、魔法みたい。」


本当に驚くくらい、自信が湧いてくる。

そして私たちは残された時間を練習に費やした。


「妃花」


私の姿を初めて見た皇輝は、皆とは違って驚く素振りは見せず、

ただ当然のようににっこりと微笑んで、「似合っている」と一言。


私はその余裕のある笑顔に、結局、胸を高鳴らせてしまうのだ。


劇本番の直前まで練習をしていて、

これが本番だなんて信じられない気持ちの中、

私たちは会場となる体育館の外で、クラス全員で円陣を組んだ。


「えー、いろいろ大変なことはありましたが、

とにかく乗り切って、最高の思い出にしましょう！

よろしくお願いします！行くぞーーー！」


「「おーーーー！！！」」


怒涛のような準備を越えて、私たちは体育館横の控えへと移動する。


控えに入った途端、緊張で足が震え出す。

クラスメイトに勇気はもらったとはいえ、慣れない舞台に、大勢の観客。

想像するだけで、私の緊張は簡単にピークに到達した。


前のクラスのエンドロールが始まり、撤収作業が行われる中、皇輝に肩を叩かれる。


「セリフ、適当でいいから。俺が持ってくから」


緊張でおかしくなりそうな私を解すように、柔らかく肩を抱く皇輝。

安心するその言葉に私は、深呼吸をしてから、しっかり頷いた。