誰も知らないもうひとつのシンデレラストーリー
また盛り上がり始めたクラスを横目に、

私は、静かに、思い出した小説の文面を口にした。


「姫を置いて去っていく王子様は、すれ違いざま姫にだけ聞こえる声でそっと一言囁きました。」


ただの独り言のつもりだったそれは、しっかりと、隣にいた王子様に拾われた。


「あれ、抱きしめたと思ったんだけど、すれ違いざまだった?」


クラスメイトには聞こえないような声で、落とされた言葉。

そのいたずらな笑顔に、私は隣に立つ皇輝を見上げる。


「うん。あと、あんな風にはっきりと、王様に伝えてくれなかった。」

「それは…いいじゃん、本当は、あんな風に伝えるつもりだったんだよ」


少し意地悪を返せば、皇輝は、気まずそうに目を逸らす。

そして、同時に二人で笑った。


「ひめ」


優しすぎる、その声に、再び皇輝を見上げる。

その美しい瞳が私を捕え、私は、温かく幸せな感情に包まれた。


皇輝はそっと私の横にしゃがみ、手を握った。


そして、物語の続きを、口にする。



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「迎えに来たよ。やっと、出会えた」


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