【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
花火大会の開催地は数駅先。
雪崩のように降りる人々に押し出されるようにして電車を降りる。
すると駅を出てすぐ、花火大会仕様に衣替えした街並みがわたしたちを出迎えた。
行儀よく等間隔で飾り付けられた提灯に、所狭しと並んだ色とりどりの屋台。
忙しなく声が飛び交う通路は浴衣を着た人間で溢れ、香ばしい匂いがあちこちから漂ってくる。
みんな心が浮ついているのか、空気が賑やかだ。
流星くんの提案で、花火が打ち上がるまでの時間を、屋台を見ながら過ごすことにした。
目的地を決めないまま商店街を練り歩く。
そして食べたいものがあったら都度そのお店に立ち寄り、食べ物を買う。
道に並ぶのは、定番のたこ焼きやからあげ、りんご飴やクレープなど魅惑の食べ物ばかり。
普段は節約しているけれど、今日ばかりはあまり我慢しすぎないと決めていた。
「はあ、幸せ……」
ほくほくのじゃがバターを頬張り、わたしは幸せを噛みしめる。
花火大会、ばんざい……!