【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
「さ。そろそろ行こ、藍。うちん家で2次会しなきゃ」
「え、花火見ないで?」
「花火見てからにしようよー」
女子の先輩たちがわいわい盛り上がっている。
わたしは後ろからそっと近づくと――思わず、藍くんの浴衣の裾をつまんでいた。
「由瑠?」
藍くんが振り返る。
「行かないで……ほしい」
藍くんの浴衣をつまんだまま、なけなしの勇気と声を振り絞る。
すると、その時だった。
ドンッと地鳴りのような音ののち、眩しい光が街を照らし出した。
花火の打ち上げ時間になったらしい。
次から次へと花火が夜空に咲いていく。
大気を震わせる太鼓のような低音が、足の底から体の芯まで響いてくる。