【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
するとその手を掴まれ、ぐいっと引き寄せられる。
顔がすぐそこまで迫り、けれどその腕の力は緩んで、またわたしの腿に頭を下ろす。
「あーあ。熱なきゃ無理やりにでも襲ってたのに」
「なっ」
その時。あることが思い浮かび、わたしは小さく下唇を噛みしめた。
だって、その“あること”が、少し勇気の要ることだから。
でも――。
わたしは垂れるサイドの髪を耳にかけると、上体を倒して藍くんの額にキスを落とした。
きっと今、真っ赤な顔をしているから見ないでほしい。
けれど、そんなことはこの状況では不可能なわけで、わたしは小さく震える声を振り絞った。
「代わりにおまじない。体調が早くよくなりますように」