【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

すると藍くんは突飛な行動に驚いたように目を見張り、それからわたしの頬に手をそっとあてがい、

「――なんでそんなにまっしろなの、ゆる」

一言なにかを呟いた。


けれどあまりにわずかなその声を咄嗟に拾い上げることができず、わたしは「え?」と聞き返す。


けれど、藍くんはわたしの頬から手を離し、同じことを繰り返してはくれなかった。

それどころか。


「……もう一回」

「も、もう一回っ?」


藍くんの瞳はおもちゃでも見つけたみたいに弧を描き、わたしに意地悪を言う。


「だから、おまじない。もう一回してくれたら全快する気がするんだけど」


そんなの無理だ。

だってさっきの一回で、ノミのように小さなわたしの心臓はもう破裂寸前なのだから。


「も、もう一回は無理、限界……!」

「びょーにんが頼んでるのに?」

「こっちが倒れそうだよ……っ!」
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