【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
わたしは身を捩り、藍くんに身体ごと向き直った。
きっと力尽きて寝てしまったんだ。
さっきまではわたしに心配をかけまいと軽いトーンで振る舞っていてくれたけど、身体はしんどかったはず。
でも、なんであんなことを言ったのかな……。
自分から突き放したくせに、どうして傷ついたような顔をしていたんだろう。
大きななにかを見逃してしまっているような気がして……。
そしてわたしは、藍くんに言われて初めて自分の心に気づいてしまった。
わたしは藍くんに触れられるたび、どきどきしているんだって。
じゃあ、わたしはどうして藍くんにどきどきしているのだろう。
――わからない。
でも、本能のせいだと決めつけられたのが悲しかったしショックだった。
ぐるぐるとわからないことばかり。
でも今は、藍くんが早くよくなること、それが一番大事。
「藍くん。わたしはここにいるからね」
優しくそっと何度も頭を撫でる。
すると徐々に眉間の皺はなくなっていき、穏やかな寝顔へと変わっていった。