【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
あの日のことを思いだす。
本当は神崎くんにあげるつもりで作ったけど、神崎くんが甘いものを食べないことを思いだして、それから。
「ある人にね、あげたの。すごく嬉しそうに受け取ってくれたんだけど、その人は甘いものが苦手だったんだって」
あの日のことを思うと嬉しくて、でも不器用な優しさが心に沁みて窒息しそうになる。
そうやって藍くんのことを考えていると、神崎くんが食べ終えたお弁当箱を膝の上に置き、静かに語りかけた。
「優しさが似てるね、中町さんとその人は。自分を犠牲にして、相手のためだけを思う気持ちが」
それから神崎くんはわたしの顔を覗き込み、そして思いがけない言葉を口にした。
「それってもしかしてだけど、3年の千茅先輩のことだよね?」
藍くんと面識なんてないはずの神崎くんがあまりにもあっさりと正解を導いたことに、驚かずにはいられなかった。
「どうしてそれを……」