【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
動揺するわたしに、神崎くんは柔らかな調子を保ったまま、けれど語りかけることをやめようとはしなかった。
「でも藍先輩のことを話す中町さんの瞳、すごく愛おしそうだったよ。君は、藍先輩のことを自分のことより大切に思っているんじゃないかな」
神崎くんが、こんがらがった糸を解いていくように、優しく問いかけてくる。
静かに、だけど確かに核心をつく神崎くんの言葉に、わたしは自分の心を手探りしながら頷いていた。
「……それは……うん……」
喉の奥から振り絞った声は、なぜか掠れていた。
……そうだ。
気づいたら、なにより大切な存在になっていた。
どうしようもないクズで、いつもわたしをいじめてくる藍くん。
でもそこに潜んだ温もりに触れるたび、藍くんの不器用な優しさに包まれるたび、藍くんが愛おしくなった。