【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

『あー、あのいつも着けてるピアス? 藍ちゃんのお気に入り』

『そんなんじゃねぇわ』


仲間のうちのひとりがからかってきたが、正直手放せないでいるのは間違いではなかった。

あれは、高校入学祝で両親から贈られたものだった。


『ちょっと探してくるわ』

『おー』


そう断って、俺は来た道を戻る。


家を出て歩いてきた道を戻りながら、視線を巡らす。


けれどアスファルトを映す視界に、きらりと光るものはない。


10分ほど探して、ふと我に返る。

どこで落としたのかもわからない。

それを探し出すのなんて、無謀にもほどがある。
< 193 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop