【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
*
「ふわぁぁ」
あくびをしながら、胸元まである長い髪をコテで緩く巻き、片側に編み込みをつくる。
ヘアセットが完了したら、全身鏡の前で制服をチェックして……うん、いい感じ。
シックな黒いワンピースに、胸元に大きな白いリボンが咲くこのセーラー服がお気に入り。
寝る間も惜しんで勉強をし、見事学費免除の特待生となり、今こうしてこの制服を着ることができている。
パジャマ姿から女子高生へと変身完了。
わたし、中町由瑠は鏡の前でにっこりスマイルを作る。
今日も無事に終わりますように。
笑顔でいればきっといつか幸せになれるはずだから。
準備を終えて、思わずクセで「行ってきます」と言いかけて、ひとけのない家の中を見る。
……そうだ、だれもいないんだった。
わたしはこの小さな部屋でひとり暮らしをしている。
バイトで資金を集め、このアパートに引っ越した。
決して新しいとは言えないおんぼろアパートだけど、初めてできたわたしの六畳一間のお城だ。
ここに暮らし始めてようやく、わたしは息をできるようになった。