【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
「ちょっと……ショックだったなぁって。"特別体質"とか運命の番とか、あんまりいい思い出がないから」
なるべく暗い雰囲気にならないよう、苦笑しながら本音をもらす。
「だから、まわりの人にはわたしが"特別体質"だってこと言わないでほしい、です。お願いします……」
この体質を隠し通せるとは思っていなかった。
フェロモンが出なくなるには運命の番に出会うしかないけど、そんな人はきっと現れない。
でもせめて、離れて住んでいるあの人たちだけにはバレたくなかった。
すると藍くんは、存外にもあっさり受け入れてくれた。
空を見上げ、聞いたことがないくらい穏やかな声を放つ。
「隠すのは別にいいけど。でもなにも後ろめたいことなんてないけどな。"特別体質"だけが、運命の番となにより強い絆を手に入れる特権を与えられるだろ。それってすごく幸せなことだと思う。俺のまわりだって運命の恋に憧れてる女子ばっかりだよ」
「そう、なの……?」
真っ暗闇に放り出されたような気持ちでいたわたしは、藍くんの言葉に目をぱちくりとさせる。
そっか、そんな考え方もあるのか……。
たしかに、中学生の時先生から説明をされた時、まわりの女子たちは浮き足立っていた。
そして16歳になったら運命の人と結ばれるかもと、みんなきゃっきゃと喜んでいたっけ。