【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
『……え……?』
唇を離した刹那、視界いっぱいに映ったのは、瞳の水面を揺らめかせ困惑の表情を浮かべた由瑠だった。
あ……。
今、俺、多分とんでもないことした……。
頭の半分がひどく冷静になって、もう一方の頭半分が動揺したままで。
勝手に口が動いていた。
『……彼女と間違えた。でも別にいいだろ、減るもんじゃないんだし』
すぐに頬に激しいビンタをくらい、はっと我にかえれば、軽蔑と恐怖の目で俺を見る由瑠がいた。
『初めてのキスだったのに……!』
由瑠はぎゅっと下唇を噛みしめると、こちらを見ないまま走り去っていった。