【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
すると密が暗い影を表情に落とした。
そしてぽつりと、白い空間に声をこぼす。
「……本当は由瑠ちゃんもここに来てくれてたんだ」
「え、あいつが……?」
俺は、この体調不良が抗フェロモン剤の副作用のせいだと、薄々気づいていた。
もしかして、とつい追求するような眼差しで密を見つめると、密は顔を伏せた。
「……話したよ、勝手にごめん」
「なんで」
「どうしたらいいかわからなかった。藍にも由瑠ちゃんにも幸せになってほしいから……」
「密……」
いつもへらへらとした顔が、見たことがないほどの苦悩に歪んでいた。
唯一、俺が抗フェロモン剤を飲んでいたことを知っている密。
俺のためと由瑠のためと、その板挟みになって、多分すごく悩んだんだと思う。
そんな友人を責めることはできない。