【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
するとその時。
テーブルの上に置いてあったスマホが振動した。
藍くんのスマホが着信を知らせている。
藍くんはわたしから離れ、電話に出る。
「もしもし?」
藍くんの声に続けて聞こえてきたのは、なにを言っているのかまでは聞き取れないけれど、女の子の声音だ。
「今? あーごめん、取り込み中なんだよね」
藍くんはわたしに背を向けたまま、電話越しの女の子と談笑を始める。
「はは。それまじ? リカちゃん、最高じゃん」
途中で投げ出された格好になったわたしはほんの数秒ぽかんとし、それからふつふつと沸き起こる怒りに震える。
そうだった……!
この男は女たらしのクズだった……!
藍くんがわたしの相手をしてくれているのは、女の子ならだれでもいい快楽主義者だからだ。
藍くんにとってわたしは大勢いる遊び相手の中のひとりに過ぎない。
発情している時は理性が効かず、本能のまま目の前の彼を求めてしまうけれど、やっぱりこんなのダメだ……!
ファーストキスがわたしだっていうのも、きっとというか絶対うそに決まってる!
わたしは発情の余韻でまだぼんやりしている頭をふるふると横に振り、ぱちんと両頬を叩くと、乱れた制服を直してひとり談話室を出たのだった。