【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
額に吹き出た汗を腕で拭きながら、ぐつぐつ音の立つ鍋をかきまわしていると、鍵の開く音に続いて、「ただいま」と藍くんの声が聞こえてきた。
ぱたぱたと藍くんの元に駆けていくと、藍くんが玄関でローファーを脱いでいるところだった。
「おかえり、藍くん……! お腹空いた?」
藍くんの顔が見られた嬉しさから上擦ったトーンでそう聞けば、藍くんの肩と顔からふっと力が抜けるのが見えた。
「ああ、空いた」
「夕食、もう少しでできるからちょっと待っててね」
なんだか新婚みたい……とはしゃいでしまう気持ちを抑えながら、お腹を空かせた藍くんのためにも、早く夕食を食卓に並べなければと急いでキッチンへ戻る。