【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

「いないなら、勝手に絆創膏一枚いただいちゃいますねー」


いない先生に向かって、女子生徒が声を張りあげる。

――その声に重なるようにして、ぽとん、とカップケーキがわたしの手からベッドに落ちた。


「もっと美味そうなの見つけた」


まるでなにか悪企みを発見したかのように藍くんがそう囁き、それから掴んだままのわたしの手についたチョコを、赤い舌を伸ばしてぺろりと舐めて見せた。


「あま」


藍くんが意地悪く唇の両端をつり上げ、そう囁く。


深く切り込まれた二重の線。

そして長い睫毛の下の、色素が薄いヘーゼルナッツ色の濡れたような瞳。

女子が羨むものがすべて集約されている目元はひどく蠱惑的で、見慣れているはずなのに不覚にも心臓が揺れる。
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