【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

「でもゆるるん、神崎くんと話したことないんだよね」

「えっ、そうなの?」


隣に座る瑛麻ちゃんの言葉に、流星くんが目を見張ってわたしを見る。

わたしは胸の前で手を合わせ、悟りを開くようなポーズで答える。


「いいの。遠くから眺めてるだけでじゅうぶんだから」


たまにクラスメイトに、そんなに好きならなんで告白しないの?と聞かれたりもするけれど、推しの存在とはそういうものではないのだ。

恋愛感情とは違う。

認知だってしてもらわなくても構わない。

ただ推しが今日もすこやかに息をしていてくれれば、それだけで幸せなのだ。


するとその時。

突然、食堂の入口の方が黄色い歓声に包まれた。


カレーを掬ったスプーンをくわえながらそっちを見ると、わたしより先に歓声の理由に気づいた瑛麻ちゃんが声を上げた。


「きゃぁ! 藍先輩だ!」
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