【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
うわぁ……。
まったく、今日も大勢の女子引き連れちゃって。
たしかに人並外れたルックスはかっこいいと思わざるをえないけど、大事なのは中身だ。
品行方正なわたしの推しの方がよっぽど素敵なのに。
遠巻きに他人事のように見ながら、カレーを食べていると。
「あれ? 藍先輩、こっちに向かってきてない?」
「え?」
瑛麻ちゃんが悲鳴にも似た声をあげる。
その声につられて顔を上げれば、こちらに歩いてくる藍くんとばっちり目が合ってしまった。
「由瑠じゃん」
……ああっ、見つかってしまった!
もちろん、まわりの女子たちの敵意に満ちた視線がこちらに集中しないわけがなく。
穴があったら入りたいとは、まさにこのこと。
そんな張り詰めた空気を、藍くんは意にも介さず、わたしの方へすたすたと歩いてくる。
「偶然だな、由瑠」
「あ、藍くん……」