【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない

「昨日の夜、シャワー中にお前歌うたってただろ。丸聞こえだったんだけど」


藍くんが迷惑そうな声で忠告してくる。

薄い壁だから隣にまで聞こえてしまうことをすっかり忘れていた。


というか、そんなことより……!

こっちに向けられてる視線が、一気に冷えたんですが……!

誤解を招くような言い方しないで……!


「ちょっと、なにあの子」

「あの子、藍のなんなの?」


ひい……!

決して平和じゃないひそひそ声が聞こえてくる……!


わたしは話題をそらすように、初対面であろう藍くんに流星くんを紹介する。


「あ! えっと、彼は瑛麻ちゃんの彼氏さんの流星くん、です!」


すると藍くんは、さっきまで女子たちに向けていたものよりだいぶ手抜きの適当な笑顔を見せる。


「へー、こんにちは。いつも由瑠がどーも」


藍くんは同性にはこれっぽっちもなびかない。


一方の流星くんは、背筋をぴんっと90度に伸ばした。


「は、初めまして! 藍先輩のことは知ってます!」
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