【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
5分ほど歩き、車の往来が激しい大通りを抜け、路地裏に差し掛かった。
暗い夜道に街灯はぽつりぽつりと立っているだけ。
あと15分ほど歩けばアパートに着く。
けれど身体に異変が起こったのは、その時だった。
突然めまいに襲われ、わたしはふらついた。
まずい、と思った時にはもう遅かった。
身体じゅうが発火するような熱を持ち、息が浅くなる。
間違いない、これは発情のサインだ。
バイトの時から続いていたのは、疲れによるものではなく発情期の予兆だったのかもしれない。
こんな外で発情することなんて今までなかった。
念のために緊急用のフェロモン抑制剤も処方されていたけれど、今日に限って持ってくるのを忘れてしまった。
よりによってこんな時に……どうしよう。
このだるい身体を引きずって、アパートまで辿り着けるだろうか。
暗闇の中でぎゅうっと身を縮こまらせた時だった。