【完】クズな彼の危険すぎる偏愛から逃げられない
「おやすみ、藍くん」
「ああ、おやすみ」
やがて数分経った頃、耳をよく澄ませなければわからないほどかすかに寝息が聞こえてきた。
「もう寝た?」
返事はない。
その沈黙を寝たと判断し、小さな独り言をその背中にぶつける。
「……ありがとう、藍くん。藍くんがいてくれてよかった」
そういえば、藍くんはなんでこんなところにひとりで住んでいるんだろう。
キラキライケメンが、こんなぼろくさいアパートに住んでいるなんて、ちょっと非現実的だ。
尋ねようと思ったのに、それは襲いくる眠気にかき消された。
そして、さっきまで聞こえていた寝息がいつの間にか途切れていたことに気づかないまま、眠りに誘われた。