The previous night of the world revolution~F.D.~
「ルレイアっ…。幸せに…幸せになってねっ…!」

「ありがとうございます、シュノさん」

これから結婚式に臨む俺に。

シュノさんは、涙ぐみながら手を取って、何度もそう繰り返した。

…もう充分、俺は幸せですよ。

幸せになってね、と心から俺を祝福して、送り出してくれる人がいるというだけで。

これ以上、幸せなことってあるでしょうか?

そして、今日という俺の門出の日を祝福してくれるのは、シュノさんだけではない。

「ルレイア、結婚おめでとう」

「こんちくしょー、ルレ公。アリューシャ達の分も幸せになりやがれ!えぇっと、こん、こん…こんぐらでゅえーしょん?」

「ありがとうございます、アイズレンシア。それにアリューシャも」

それからアリューシャ。それを言うならコングラッチュレーション、では?

卒業になってましたよ。今。

まぁ意味は伝わってるので大丈夫です。

『青薔薇連合会』古参組であるシュノさんやアイズ、アリューシャに祝福されると。

喜びもひとしお、と言ったところですね。

そして。

「おめでとう、ルレイア先輩。今日という日を祝して、特製のウエディングクラッカーを作ってみた。受け取ってくれ」

「ルレイア師匠、おめでとうございます。海外では、結婚式にハンカチをプレゼントする文化があるそうです。そんな訳で、僕が刺繍したハンカチをどうぞ」

「ありがとうございます。ルリシヤ、ルーチェス」

頼れる後輩のルリシヤが、お手製のクラッカーを。

ルーチェスが、青いバラを刺繍したハンカチをプレゼントしてくれた。

いやぁ、嬉しいですね。

後輩達から祝福されるなんて。何だか照れますね。

このクラッカー、後でパーンしてみよう。

そして、祝福は部下からも。

「おめでとうございます、ルレイアさん。これは私から、ささやかな祝福です」

「ありがとうございます、華弦さん…。…何ですか?これ」

華弦さんは、俺に真っ黒な手帳をプレゼントしてくれた。

表紙も、ページも、背表紙も裏表紙も全部真っ黒。

大変目に優しい良い色ですね。白インクでしか書き込めなさそうですが。

「シェルドニア王国には、新婚夫婦に真っ白なノートや手帳をプレゼントする風習があるんです。二人で新たな物語を築くように、という願掛けで」

「はぁ」

「ですがルレイアさんは、白より黒の方が良いかと思いまして。特別に黒いノートを用意させていただきました」

成程、華弦さん…あなた俺のこと分かってますね。

ありがとう。大切に使わせてもらいます。

そして、別の部下からも。

「ルレイアさん、この度は結婚おめでとうございます…。…これ、俺と、俺の嫁からの結婚祝いです」

「ありがとうございます、ルヴィアさん…。…これは何ですか?」

ルヴィアさんが結婚祝いにくれたのは、骨を削って作った、血走った赤い1つ目のグロテスクなお人形。

これは夜中に見たら悲鳴をあげるレベル。

「俺もよく知らないんですけど…箱庭帝国で、結婚式に送られる祝福の記念品だそうです」

「祝福なんですか、これ?」

呪いをかけようとしてません?この形相。

「そのいかめしい骨人形が、夫婦をあらゆる厄災から守ってくれるそうです…。お守りになるので持っていてください、ってフューニャが」

「そうですか。ありがとうございます」

そういうことなら…有り難く受け取っておきますよ。

これも、大事な祝福の品ですからね。
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