The previous night of the world revolution~F.D.~
「まず最初に…革命前の箱庭帝国の様子です」

大きな白いパネルに、昔の箱庭帝国の様子を映した写真や、絵が貼られていた。

カラー写真はほんの僅かで、ほとんどが白黒の写真ばかりだ。

それに、写真よりも絵の数の方が多い。

「絵ばかりですわね」

マリーフィアは素直な感想を述べた。

絵よりも写真の方がリアリティがあると思うんですけど。

敢えて絵の方が多く展示されているのは、何かの意図があってのことなのか。

「実は、憲兵局支配時代の資料は、あまり残っていないんです。一般市民にはカメラなんて普及されていませんでしたから」

とのこと。

成程。やっぱり理由があったんだな。

ルアリスは口にしないが、恐らくは、そういう憲兵局にとって「都合の悪い」資料は、憲兵局の連中が証拠隠滅したのだろう。

そのくらいのことはやりそうじゃないか。

「成程、それで絵が多いんですのね…」

「昔の箱庭帝国は、長い間憲兵局の支配のもと、鎖国状態を続けていました。元々貧しい国でしたから、憲兵局は国民達から搾取して、一部の特権階級だけが利益を貪る…そんな状況だったんです」

かつてのルアリスの親父みたいにな。

「そのせいで、国民達は常に貧しく、食うや食わずの生活を続けていたんです」

展示されている絵や写真は、どれも悲惨なものばかりだった。

荒廃し、枯れ草ばかりが生えた貧しい土地を映した写真。

栄養失調の為に、腹部だけが不自然に膨らんだ子供の絵。

等々、なかなかショッキングな展示物ばかりだ。

これは絵画で良かったかもな。こんなショッキング…言い方を変えれば、グロい風景。

写真だったら生々しくて、とても一般展示は出来なかっただろう。

絵だから、まだ耐えられると言うか。

俺は、人間の内臓が目の前にあったとしても平然としていられるけど。

中にはマリーフィアみたいに、箱庭帝国の歴史なんて、全く知らない無知な客もいる訳で。

そういう奴らにとっては、あまりに刺激が強過ぎる。

「…」

その証拠に、マリーフィアなんて早くもドン引きの様子。

繊細なお姫様じゃないか。なぁ?

このくらい、ルティス帝国のスラムでも見られるぞ。

「大丈夫ですか?マリーフィア殿」

「え、えぇ…。でも、そんなに酷い状態なんだったら、どうして国民達は黙っていたんですの?そんな悪い指導者がいるなら、辞めさせれば良かったじゃありませんの」

だってさ。無知の極み。

今日も遺憾なく、自らの無知を披露していますね。

「社長が残業代払ってくれない?じゃあその会社辞めれば?」くらいの気軽さ。

そんなことが簡単に出来ると、本気で思ってるのか?この馬鹿女は。

隣に立ってる俺が恥ずかしくなってくるレベル。
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