The previous night of the world revolution~F.D.~
これにはルアリスも、さすがに怒るかと思ったが。

と言うか、怒っても良いと思ったが。

ルアリスは相変わらず、穏やかな表情を崩さなかった。

「それが、簡単には出来なかったんですよ」

「どうしてですの?」

「少しでも憲兵局に逆らうような真似をしたら、容赦なく、一族郎党粛清されたからです」

出た。憲兵局の十八番。「粛清」。

たったこの二文字で、一体これまで何人の人間が、闇に葬られてきたことか。

それなのに、マリーフィアは。

「粛清…?追放されたり、税を重くされたりしたんですの?」

随分と可愛らしい粛清じゃないか。

その程度で済めば良かったんだけどな。

「まさか。処刑されたんですよ」

ルアリスはきっぱりと答えた。

「えっ…。殺されたんですの?」

「えぇ。殺されました…大勢の無辜な国民達が、憲兵局の粛清に遭って命を落としたんです。昨日見に行った、秘境の里に住んでいた人々もそうです」

秘境の里の住民は、怪しい占いなんかする民族だからって、特別憲兵局に目を付けられてたんだっけ?

華弦姉妹もそう。

才能のあったルヴィアさん嫁だけ、親の手元に残されて。

占いの才能のなかった華弦は、シェルドニア王国に売り飛ばされた…。

そういう悲しい事件が、憲兵局支配時代の箱庭帝国では日常茶飯事だったのだ。

マリーフィアに想像も出来ないだろうけど。

「まぁ…。大変だったんですのね」

他人事。

「大変だったのね(私は知りませんけどね)」っていう本音が透けて見える。

「そういうことが幾度となくあったので、この状況を何とかしようと…革命軍が組織されたんです」

施設内の展示は次のコーナーに。

今度は、革命中の展示物が並んでいる。

革命軍に参加した人々の名簿や写真などの展示物。

更に、ガラスケースの中に、革命の時に実際に使われた武器なんかが展示されていた。

へぇ。懐かしい。

俺の鎌とか、一緒に並べます?

「まぁ、本当にこんなものを使ってたんですの?」

「えぇ。革命軍は最初、憲兵局に対して話し合いで解決することを望んだんですが…。残念ながら、聞き入れてもらえず…」

当たり前でしょう。

でも、確かにあの時ルアリスは、武力を使わずに事を解決したいと寝言を言っていたっけ。

「やむを得ず、憲兵局と戦うことになったんです」

「そうなんですのね。わたくし、軍隊のことなんてよく知りませんけど…。そんな急拵えの革命軍で、政府軍に勝てるものなんですの?」

ほう。よく知らないと言いながら、なかなか核心を突いた良い質問じゃないか。

その通りである。

「勿論、急拵えの革命軍で憲兵局は倒せません。それは、革命軍のリーダーも分かっていました」

「やっぱり…。それじゃあ、どうやったんですの?」

「隣国の…ルティス帝国に助けを求めたんですよ」

「まぁ、ルティス帝国に?」

自分の国の名前が出て、驚きに目を見開くマリーフィアである。

…ルティス帝国が革命に関与したってことくらい、仮にもルティス帝国貴族なら、常識として知っとけよ。
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