The previous night of the world revolution~F.D.~
俺はうきうきと買い物を終えて、別便でルティス帝国の『青薔薇連合会』本部宛に送ってもらった。

いやぁ、良い買い物をすると気分が良いですね。

…しかし。

「…うーん…」

「?マリーフィアさん、どうかしました?」

俺が会計を終えても、マリーフィアは空っぽの買い物カゴを持ったまま。

店内の陳列棚に突っ立って、難しい顔で唸っていた。

どうした。生理か?

「あ、ルナニアさん…。…実は、何を買えば良いか分からないんですの」

「え?」

…何で?こんなに面白いお土産が並んでるのに?

「何だか、思ってたのと違いますわ…」

マリーフィアは、いかにも不気味そうに箱庭帝国のお土産を眺めていた。

…まぁ、気持ちが分からなくもない。

普通旅行先のお土産と言ったら、お洒落なアクセサリーや、クッキーやチョコレートなどのお菓子や。

ご当地キーホルダーとか、ピンバッチとか、ワインとか、紅茶やコーヒーとか。

そういうものが定番ですけど。

残念ながら、箱庭帝国にそのような「一般的な」お土産はない。

全然ない訳じゃないけど、数は少ないし、あったとしてもかなり独特である。

アクセサリーだって、さっき俺が買ったみたいな、貝殻や木の実などの天然素材を加工したものが多く。

マリーフィアが好んでつけるような、大粒のダイヤモンドやルビーやサファイア、などのアクセサリーはない。

宝石は取れませんからね。箱庭帝国は。

あくまで、天然素材から作ったアクセサリーがメイン。

それはそれでお洒落だと思いますけどね。俺は。

お土産の定番であるお菓子も、ない訳じゃないけど、よくあるクッキーとかチョコレートはない。

砂糖が貴重な国ですからね。

お菓子のお土産と言えば、これも先程俺が買ったような、天然由来の素朴な甘さを活かしたお団子や。

あとは、こちらも素朴な甘さの小さなベッコウ飴とか、塩味の薄焼きのせんべいとか。

見た目には、結構地味なお菓子が多い。

試食が置いてあったから、試しに食べてみましたけど。

味は美味しいですよ。どれも甘さ控えめって感じで。

しかし、マリーフィアにはイマイチ、ピンと来ないようで。

「買いたいと思うものがありませんわ…」

…あ、そう。

これだけ贅沢な土産物に囲まれていながら、買いたいものがない、とは。

じゃあ、そのまま何も買わずに帰れば良いんじゃないかな。

食べるものがなくて、この国で餓死した国民達に呪われてしまえ。

全く、なんという贅沢な女だ。

しかし、軽蔑を顔に出す訳にはいかない。

俺はにこやかに微笑んで、マリーフィアに色々なお土産を勧めた。
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