The previous night of the world revolution~F.D.~
アリューシャが、一回ぐっと引き金を引くなり。

パンッ、と弾けるような音がして。

何メートルも先の、小さなペットボトルのキャップが宙を舞った。

「えっ…」

目の前の出来事が信じられず、俺は思わず呆気に取られた。

俺だけじゃなくて、ペットボトルキャップをセットしてくれた部下も、目が点になっていた。

数メートル先で、模擬弾に射抜かれたペットボトルのキャップが、地面にころんと転がっていた。

ま…。

…マジで?

本当に…本当に当てやがった。一発で。

「どーよ!見たかアリューシャの実力!」

渾身のドヤ顔で、Vサインを決めるアリューシャ。

…アイズがよく、「アリューシャはやれば出来る子だよ」と言ってるけど。

あれはもしかして、こういう意味なのか?

アリューシャのスナイパーとしての腕前は、充分に知っているつもりだったけど。

どうやら俺は、まだまだアリューシャを見くびっていたらしい。

「…ごめん、アリューシャ…。俺が悪かった。お前を見くびってたよ…」

「ふはは。アリューシャはすげーだろ?ポテチ奢ってくれて良いんだぞ」

「…分かったよ…」

今回ばかりは俺に非があるから、後でコンビニに走ってポテチ買ってくるよ。

悔しいけど、仕方ない。

俺も狙撃銃を握って、アリューシャの真似事をして…アリューシャがいかに優れた技術を持っているか、よく分かった。

「…アリューシャ、お前がいかに凄いかがよく分かったよ」

「そうだろ、そうだろ?」

「その技術を、俺にも教えてくれないか」

「…」

自慢げに自分の腕前を誇っていたアリューシャが、くるりとこちらを向いた。

「一体どうしたんだよ、ルル公は?なんか変だぞ」

「…何がだよ?」

「突然アリューシャが昼寝してるところに来て、アリューシャを叩き起こすなり、『狙撃を教えてくれ』って頼んできてさー」

「…それは…」

…説明すると、長くなるが。

アリューシャに狙撃を習おうと思った、そのきっかけは。

実は、俺の部下のルヴィア・クランチェスカにある。
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